王子動物園ではおよそ160種類、880点の野生動物を育て、多くの方に見てもらっております。
動物園の動物は、食べ物や飲み水の心配をする必要がなく外からの敵に襲われることもありません。また、
清潔な環境の中で飼育されているうえ、病気やけがをした場合には治療もしてもらえるため、自然の中で生
きているものより長生きするといわれております。しかし、動物園では自然の中のように、本能に基づいた
活動をすることは十分にはできません。
野生の動物は、棲んでいる環境に適応して生きているため、動物園という人工の場所で飼育し、繁殖して
いくことは大変難しく、科学的な知識に基づいた愛情と工夫が求められます。
王子動物園には、今年還暦を迎える日本で最高齢のインドゾウの「諏訪子」がおります。ヒトに例えれば
100歳を超えており、高齢のため福祉や介護の対応が求められております。また、雌のインドゾウ「ズゼ」
に妊娠の兆しが見られ、無事に生まれれば我が国で初めての動物園での出産事例となります。現在、母親と
子ゾウのためにゾウ舎を改修し、動物園の中での出産に万全を期すことにしております。
王子動物園ではこのような獣舎の改修のほかにも、野生動物が動物園で快適に生活してもらうために、食
べ物や遊具などで色々な努力や工夫をしております。
このたび、王子動物園の機関紙「はばたき」53号を発行する運びとなりました。この「はばたき」をご
覧いただき、動物園関係者の野生動物に対する考え方や対応をご理解いただくとともに、命の大切さや親と
子の絆、自然環境の保護の必要性など、動物園の野生動物たちが皆様方に語りかけていることについて考え
る参考になれば幸いと思います。 |