動物園の近況
神戸市立王子動物園園長 大久保 建雄
 前号以降の半年、様々な出来事が有りました。中でも私達にとって大きな関心事は「ゴリラの導入」 とインドゾウ「ズゼ出産への期待」であります。ゴリラは香川県高松市の「栗林公園動物園」の閉園に 伴い、栗林公園動物園の要請により当園が引き取り飼育することとなり、去る1月21日に移動を完了しま した。年間を通し最も寒い時期、しかも雌雄2頭同時の輸送であり、輸送に伴うリスクを考え暖かい4月頃 と思っておりましたが、先方様の都合でやむなく1月実施となりました。この様に不安要因を抱えながら の輸送が無事終了したのは、底冷えのなか再三にわたり高松に行き、周到な準備を惜みなく頑張ってく れた職員の努力のお陰と感謝しています。2頭のゴリラが新しい環境に馴れ、健やかにして入園者に親し まれることを願い、更に将来「種の保全」計画に寄与出来る事を願っています。
 さて今一つの関心事「ズゼの出産」でありますが、前回は死産という極めて残念な結果を見ており、全ての職員が「今回は是非」との熱い思いを強く抱い ています。この思いを反映させ出産とその後の哺育の安全性を高めるべく、寝室の拡張と母子用サブパ ドックの設置等飼育環境の改善を図り、一方獣医師や飼育担当職員は出産に向け様々な場合に対応でき る態勢の準備に努めています。ズゼの妊娠は昨年初めに報道されており、大きく膨らんだ腹部や乳房等 外見からも容易に妊娠がうかがえる今、入園者から多くの声援を頂き期待の大きさを感じています。予 定の臨月を迎え不安と期待が交錯する複雑な気持ちで、その瞬間を今かいまかと待ち望んでいます。本誌出 版の頃には「子ゾウ日記」でお知らせ出来ることを念願し、皆様方に引き続きご支援ご指導をお願いし て巻頭言と致します。
平成16年2月