「園長の一口メモ
〜動物の繁殖〜」
神戸市立王子動物園園長
石 川  理
 動物園で飼育する動物が繁殖することは飼育環境が良好である証明にもなり大変嬉しいことです。野生で生息する動物がどんどん減少している現在、 動物園で見る動物のほとんどが動物園で繁殖したものです。飼育技術の向上や動物を取り巻く色々な分野の研究成果により、かつて繁殖が難しいとされていた動物も繁殖できるようになりました。 動物園の役割の中に「種の保全」がありますが、地球に住む仲間がたくさんいることを次世代に伝えることは大変大事なことです。特に今絶滅の危機にある動物はなおさらです。ただ、 同じ両親からだけで繁殖させ増やしていくと同じ遺伝子を持った動物たちが増え、またその子供たちも含めた一族の間で繁殖させていくと遺伝学的に問題となります。このため、世界の動物園、 日本の動物園では種類ごとに血統、系統を管理し、ブリーディングローンと呼ばれる繁殖のための貸出や移動、人工授精などにより、地球規模で遺伝子の多様性を維持するようにしています。 生まれてきた子供たちはいずれ親元から離れていきます。野生動物と違って動物園の動物の移動は人が手伝わなければならないので、繁殖させる場合にはあらかじめ移動先も考えておかなければなりません。 特に大型動物などは移動先が見つからない場合、繁殖を制限することもあります。王子動物園にもジャイアントパンダやゾウ、ゴリラなど繁殖が難しい動物がいますが、職員一同なんとか皆様にかわいい子供の姿を見て欲しいと頑張って動物の世話をしています。