ジャイアントパンダの人工授精の様子。注射器に入っている白い液体が精液。 これを内視鏡で♀の子宮への入り口を確認しながら細いチューブで子宮の中へ注入。


 長野県須坂市動物園のカンガルーのハッチをご存知でしょうか。サンドバックにしがみつき、とびげりをするカンガルーでマスコミによく取り上げられ、全国で人気者になっています。  縁が有り、王子動物園よりお嫁さん(クララ)を送る事になり、園長も出席して須坂市で盛大に結婚式が行われました。須坂市の方でハッチの子供を期待していた矢先、クララが出産していたことが7月初めに判りました。ところが、赤ちゃんは生後60日程経過していることから王子動物園で妊娠していたことが判明しました。
 今、本当の父親と思われる王子のカンガルーのジャンボくんに取材が殺到しています。人間ならば、大変な不祥事になりそうですが、動物の世界ではときどきあることです。
 また、コアラのモモジも埼玉県こども動物自然公園や淡路ファームパークなど繁殖のために短期に貸し出しをして成果をあげています。そのため、わが園にも貸して欲しいとオファーが続いています。モモジがどんなメスともうまく短時間で交尾を行うので、妊娠の成功率が高いようです。日本ではコアラの高齢化や近親交配が進んでいることから飼育数が減ってきている現状があります。王子動物園だけでなく、他園での繁殖にも貢献して、日本のコアラを減らさないようにしたいと考えています。
 動物園での繁殖については、野生とかけ離れた生活環境、狭い飼育スペースとお客さんに見られるストレス、選べるペアが限られるなど大変難しい課題があります。しかし、希少な動物の種を保存していくことは動物園の役割の1つですから、 日常の動物観察や調査研究資料から様々な工夫と努力により目的を達成して行かなければなりません。
 今後も、ジャイアントパンダをはじめとして繁殖研究を推進して環境保護に寄与するとともに皆様にかわいらしい赤ちゃんをお見せしたいと思っております。
(副園長 高井 昭)