「園長の一口メモ
〜動物も高齢化社会?〜」
神戸市立王子動物園園長
石 川  理
  人間社会は急速に高齢化が進んでいますが、動物園の動物も以前に比べるとずいぶん長生きするようになりました。王子動物園でもインドゾウの諏訪子さん(1943年生まれ・64歳)、チンパンジーのジョニーさん(1950年生まれ・57歳)、レッサーパンダの洋洋(1985年生まれ・21歳)は日本最長寿です。動物園の動物は自然淘汰を受けることもなく、また食事も与えられ病気になれば獣医の治療も受けられますので長生きするのは当然といえば当然なのですが、かつてはどんな餌を与えていいものか、飼育する環境条件はどのようにすれば良いのか試行錯誤の連続でした。動物が野生状態で食べる餌の種類は非常に多く、これをすべて与えることは困難で、それぞれの動物の好み、栄養に過不足がないよう考え、入手できる限り多くの種類の餌を与えるようにしています。最近では動物の種類に応じた固形飼料も開発されています。また、現在では国内外の動物園間で情報を交換し、餌や温湿度などの環境条件、治療指針、エンリッチメントといわれる豊かに過ごせる工夫など飼育環境が整えられています。  
 ただ、動物も高齢になると若い時のようには体が動きません。かつて王子動物園には高齢のカバ(当時49歳、日本で2番目に高齢)がいましたが、足腰が弱り屋外のプールと寝室の間の勾配が急で上り下りするのに苦労していました。動物園ではこのカバのため勾配の少ないカバ舎に建て替えましたが、残念なことに工事途中でなくなりました。今後、高齢な動物が増えてくると動物のバリアフリー対策も重要なテーマになっていくかもしれません。もちろん入園者の方のバリアフリー対策も重要であることに変わりはありません。