「園長の一口メモ
〜出産に備えて〜」
神戸市立王子動物園園長
石 川  理
 動物園の動物たちの出産は、野生で生活する動物たちと違って、外敵に襲われる心配はないものの仲間の手助けは望めませんので、キーパーや獣医の世話が必要になります。
 このため事前の準備が欠かせません。キーパーや獣医は国内外の出産例や哺育例の報告を集め、動物舎そのものを出産に合わせ改造する必要がでてきます。現在ではそれぞれの動物の妊娠期間、行動変化或いは血液、尿中のホルモンデータの変化などで出産時期はある程度予測ができ、急な出産で大慌てすることはありませんが、それでも正常な 分娩が行われるのかとても心配になります。また、出産後無事母親が面倒を見てくれればよいのですが、育ててくれないことも考え、人工哺育の準備も並行して行なわなければなりません。
 動物園で飼育されている動物は群れで飼育されていることが少なく、野生で生活する動物のように仲間の行動を見て学習する機会に恵まれません。このため人工哺育になる場合が多いのですが、こうなるとキーパーや獣医は本来母親が行う育児を一手に引き受けることになり、離乳するまでの期間が長い動物の場合大変です。
 今年はカバの子が出産後すぐに亡くなり、ジャイアントパンダも死産という残念な結果になりました。動物園の職員一同次回の出産に向けて万全の備えをし、皆様方に元気でかわいい子供の姿を見てもらいたいと思っています。