園長の一口メモ
〜動物の名前〜
神戸市立王子動物園 園長
石 川  理
 動物園で飼育する動物にはライオンとかではなく、それぞれを識別するための名前があります。まず、名前といえるかどうかわかりませんが、国際的に血統を管理するための国際登録番号、国内登録番号があります。また、今回、動物園で展示している動物を紹介していますが、鳥類を除いてそれぞれ愛称がついています。鳥類は集団で飼育していることや外見から見分けにくいこともあって脚環やタグによって識別していますが、哺乳類はそれぞれ体に特徴があり、また飼育数も少ないため、識別する愛称をつけています。
 愛称の付け方には色々ありますが、ゾウの「諏訪子」のように古くから飼育されていたり、カバの三代目「出目男」のように先代から名前を引き継いでいる動物には、漢字で少し古風な愛称がついています。他の動物園から来た動物には、国内外を問わず以前付けられていた愛称をそのまま使っていますが例外もあります。先ほどの三代目「出目男」は、出身の姫路セントラルパークで「ジャウー」という名前(南米に生息し2メートル以上になる大型ナマズ、アマゾンの人喰いナマズとの異名がある)で呼ばれていましたし、ジャイアントパンダの興興は「龍龍」、旦旦は「爽爽」と中国で呼ばれていました。子ゾウ「オウジ」のように公募により愛称をつけられることもありますが、大部分は担当するキーパーがつけたものです。動物園によっては地名にちなんだもの、アルファベット順など愛称の付け方に決まりがあるようですが、王子動物園の場合は特にありません。動物、特に哺乳類を日ごろ世話するのに名前がないとなんともやりにくいも のです。特に園内で生まれた動物の場合、早く呼び名をつけないと世話するのに戸惑ってしまいます。昨年10月に生まれた子ゾウを人工哺育するのに愛称が決まるまでの1ケ月半ほどは、何と声を掛ければよいのか困ったものです。キーパーは動物たちに声を掛けながら日々の世話をしていますので、自分たちの好みで愛称をつけていますが、凝ったもの、なるほどと思うもの、由来不明のものなど様々です。来園される方々に親しみをもっ てもらうため、愛称のある動物には掲示するようにしていますが、近くにキーパーがいれば愛称の由来を聞いてみてください。
 動物たちは人間の言葉を話すことはできませんが、案外言葉を理解しているかも分かりません。それって私のこと、もっといい名前つけてよという声が聞こえてきそうです。