園長の一口メモ
〜インドゾウ「諏訪子」〜
神戸市立王子動物園 園長
石 川  理
 今年の4月10日、インドゾウとしては日本で 最長寿であった「諏訪子」が天国に召されました。
 昭和26年に王子動物園が開園する前から神戸へ来て58年間、訪れる人々を通して時代の移り変わりをじっと見続け、「諏訪子」御用達の桜の樹の花びらが散るのを見とどけるように、終の棲家となった寝室で静かに息を引き取りました。相棒も伴侶も先に失い、震災後に来た若い夫婦に運動場を譲って、寝室で静かに暮らす毎日でしたが、昭和28年にできた今でも同じ場所にあるゾウ舎で生活し、知り合いが訪ねて来て声を掛けると耳を動かし足を上げたりして返事をしていました。最後まで食欲もあり急逝したことに職員一同驚きを隠せませんでした。
 今回の特集は「諏訪子」。今まで飼育に携わってきた担当者にその思い出を綴ってもらいました。ゾウはカも強く賢くて飼育員のカ量を見切って行動するため、その飼育や訓練は非常に難しく、飼育員が危害を受ける確率の非常に高い動物です。それだけにゾウの飼育ができるようになれば−人前。当園でも「諏訪子」に教えてもらった飼育員がたくさんいるのではないでしょうか。
 戦後の復興期、高度成長期そして神戸淡路大震災を乗り越え、王子動物園の歴史そのものであった「諏訪子」は、天命を全うし今頃天国で「摩耶子」や「太郎」と再会し、好きなものをたくさん食べて楽しく暮らし、遥かな故郷や神戸の行く末を見守っていると思います。