ナマケモノの顔
■ 園長の一口メモ ■
〜動物たちはどこから?〜
神戸市立王子動物園 園長
石 川  理

 動物園で飼育されている動物たちはどこから来るの かご存知でしょうか。アフリカの大草原や東南アジア、 南米の熱帯雨林で捕獲され日本へ連れて来られている のでしょうか。現在日本の動物園で飼育されている大 部分の動物は国内で繁殖した動物です。多くの動物園 や水族館が加盟している社団法人日本動物園水族館協 会の月報に、譲渡可能な動物のリストがあり、これに 基づき動物交換、無償譲渡、有償譲渡、ブリーデイン グローン(BL、繁殖のための貸出)など条件が合え ば動物が移動します。移動は繁殖させることが大きな 目的であるため、遺伝的に問題がないか事前にチェッ クし、またBLの場合、生まれた子供をどうするかに ついても事前に取り決めます。この他、今回の特集に あるナマケモノやカメのように閉園、休館になった動 物園などから譲り受ける場合や密輸入、違法な飼育に よって没収された動物を税関や警察から引き受ける場 合があります。ただし、この場合引き受け後の飼育に 責任を持たなければなりませんので、その動物に応じ た動物舎の改造や飼料調達、飼育体制など飼育環境を 整えることが可能か判断して受け入れを決めます。
 しかし、国内だけで繁殖させていると、もともと飼 育数の少ない種類の場合、遺伝子プールも小さいため、 段々と血が濃くなり遺伝子を健康な状態で保持するの が難しくなってきます。そこで外国から動物を輸入し 血液更新を図らなければなりませんが、現在は野生の 動物を輸入するのではなく、それぞれの動物について 定められている種別調整者や国際血統登録管理者の紹 介、或いは外国の動物園で繁殖したサープラスリスト (余剰動物目録)などを基に交渉し動物を輸入します。 事前に相手方動物園へ受け入れ側動物園の槻要や飼育 場所、飼育実績、治療記録などを提出し、転出させて も問題ないか審査会で承認されてから、輸送方法、経 費の負担などの条件交渉が始まりますが、鳥インフル エンザや大陸独特の感染症の問題など今は大変難しく なっています。動物園の役割の一つとして種の保存が ありますが、貴重な種を生息域外で保全するため、各 動物園では健康な遺伝子をいかにして保持していくか 日々苦心しています。