*  思い出のアルバム  *

* 『大人のための動物園講座』
−王子動物園を194倍楽しむ方法−




 平成10年6月28日、初めての試みで開催された大人のための動物園講座。
194倍楽しむの「194」とは、王子動物園で飼育している動物の種類です。
90名の方が参加され、そのほとんどが神戸市民でしたが中には京都、大阪、 茨木から参加された方も、そして最高齢は79才。
いつもと違う視点から動物をみつめ、身近にふれあえるこの講座に、 参加された方は童心に返りワクワクしている様子が伺えます。

プログラム
◆森本副園長あいさつ◆

今まで小中学生を対象に動物園講座を開いていましたが、 これを機会に大人の方にも動物園を身近に感じてもらい、 そしてもっと動物園のファンになってもらいたいと思っています。
普段では見られない部分をみて、そして体験してください!

◆動物園の歴史と動物園の役割◆・・・権藤館長

王子動物園の歴史
1)神戸の動物園の始まり
諏訪山動物園時代・・・・昭和3年6月22日〜
※今回の参加者の中で諏訪山動物園にいかれた経験がある人は 6人もいらっしゃいました。
神戸市立王子動物園と名称変更・・・昭和12年〜
第二次世界大戦の前後・・動物処分と閉鎖
2)王子動物園時代
昭和25年ゾウの諏訪子と摩耶子が、 巡回動物園として地方をまわり資金を集め、 昭和26年3月21日から日本貿易産業博覧会跡地、 現在の場所に移転しました。

動物園の役割
1)博物館としての役割
社会教育施設、生涯学習施設、レクリェーションの場、 動物科学資料館
2)展示物は生き物
健康と環境展示、種の保存、健康管理、動物舎の安全確保
3)野生動物の保護
ワシントン条約、野生動物の救急保護、etc
地球規模で野生動物の保護を世界の動物園が考えている。
・必要とする動物園に繁殖の為に動物を貸出す。
・遺伝管理−すべての動物に戸籍があり管理されている。
王子動物園は「アムールトラ」の戸籍管理をしています。


◆動物達の食事◆・・・飼育係 班長主任 岸田さん

王子動物園の飼育係は全員で27名、内3名が獣医です。
194種類の動物がいるということは、194種類の食事があるということです。
肉食・雑食・草食、その動物の種類により、 100種類以上の食材を組み立てながら、その動物に合ったメニューを作ります。
食材は野菜17種、果物15種、配合飼料30種、他に肉、魚、牛乳、 ヨーグルトなど。

食事を作る上での岸田さんのモットーは
(1)動物が自然の状態で食べられるようあまり加工しない。
例えばトラ、ライオンは1日5〜6Kgの肉を食べるが、 固まりのままで与える。(かみ切る、切り裂く、しっかりかます)


(2)時間をかけて食べることの楽しみを与える。
毎日動物たちとふれあえば、その子たちの好みもわかってくる。 例えば日本一長寿のチンパンジーのジョニー(オス48才)は、 トマトが大嫌い。
その理由は、自然界では赤く熟れ触った感触がブヨブヨしているのは、 腐っていると判断する習性がある、 トマトはくだものなのかやさいなのかわからないこと、 またジョニーの嗜好性もありトマトは大嫌いなのです。

ちょっと余談ですが、動物と仲良くなれる方法教えます。
●まず動物園に来たら、動物にあいさつを!
笑顔でその動物の名前を呼ぶことをくりかえすうちに、 相手の方からコミュニケーションが生まれる。
●動物たちの前では「あなたに会いに来たよ!」という心を伝える。


村田獣医師
◆野生動物の保定と麻酔◆・・・村田獣医師

治療をするうえで必要な保定(ほてい)について、 スライドと村田獣医師のピストル式注射器の実演による説明がありました。

保定(ほてい)とは、動物の自由な動きをある目的のために、 一時的に止めることです。
子ネコのえり首をつかまえて持ち上げた経験があると思いますが、 これも立派な保定方法の一種です。
動物園では素手のほかに、網やロープ、キャッチポールと呼ばれる 特殊な捕獲器などを用いて動物の動きを制します。 これを「物理的保定」と呼びます。
さらに長時間の保定が必要な時には、鎮静剤や麻酔薬を使うことがあり、 これを「化学保定」と呼んでいます。
野生動物は人間と違い、病気になっても診察台の上でおとなしく診察に応じてくれないので、 化学保定法で眠っている間に検査や治療を行います。


◆体験学習◆

コアラ班、ゾウ班、アシカ班、チンパンジー班、サイ班の5班に分かれ、 それぞれの動物へのえさやりや、調理場、動物病院の見学実習へ。

<飼育調理室の見学>
草食獣用の調理台、肉食用の調理台、魚・肉の解凍用流し、 というように万一伝染病などの蔓延を防ぐため、 食材により調理台と調理器具を分けています。
もちろん食材はすべて人間用のもので、 大型の冷蔵室と冷凍室で多種類の食材を保存しています。

<動物病院>
レントゲン、手術台、メス、保育機、血圧計etc 人間の病院同様の設備と器具が揃っている動物病院。
今まで一番多い病気は、その症状が目で見てわかる病気。
  (1)外傷
  (2)消化器系の病気(下痢、便秘の状態を観察して判断します)
  同じ病気でも動物の種類によって症状が違い、 言葉で訴えないので症状と検査データを見ながら、 その原因を判断することがむずかしい、と村田獣医師。
飼育係の方の毎日の観察により、動物たちの健康は守られているのです。

運動場 <チンパンジー班を体験>
いつもは観覧通路より眺めている、チンパンジーの放養式運動場。
今日はチンパンジー達に変わり、 私達人間がその運動場に入り1,000uの広さを実感する。
そこにはクローバ、よもぎ、さまざまな草花が咲き、まるで別世界。
「チンパンジーがよく通る道は、 草が伸びないのでどこを通っているのかよくわかります。
ガラスが張ってある宿舎側の面だけに、 8,000ボルトと10,000ボルトの高電圧が流れる電線が5本ありますが、 チンパンジーは利口なので3回の学習で、 ここに触ってはいけない!と理解します。」と岸田さん。

コアラ 他の班ではコアラにさわり以外に立派な爪にびっくりしたり、 サイの鎧のようにかたい皮膚に驚いたり、 アジを求め泳ぎ回るアシカの速さを実感したり、 ゾウの賢くおとなしい姿に感心したり・・・

飼育係の方の日々の苦労と喜びを少しだけでも共感することができ、 それぞれの心に様々な思い出を刻み、第1回大人のための動物園講座は大好評のうちに、 終了しました。



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