*  思い出のアルバム  *

* 第7回「大人のための動物園講座」

『鳥たちの子育て』(フラミンゴとペンギンの繁殖と子育てを中心に)



2002年2月24日(日)9時30分から事前に応募当選された約80人の方を対象に「大人のための動物園講座」が開催されました。

大久保園長 <大久保園長あいさつ>

今回はフラミンゴとペンギンの繁殖と子育てについて紹介します。
王子動物園には2種類のペンギンが飼育されており、その体形は足が短くずんぐりむっくりしていますが、水中でえさを求める為に進化した鳥です。
フラミンゴは脚が長くまた美しい羽を持ち、外敵から身を守るために高地や塩水湖などを生息地としている鳥です。
このように全く違う鳥ですが子育てについてはよく似ており、託児所を設けて集団保育で子育てをしているのです。
しかし生息地が狭まり絶滅の危機にあります。その原因は人間中心の為の環境破壊です。 すべての地球上の生き物がお互いに支えあって生きており、その食物連鎖の頂点にいるのが我々人間です。 『動物達が住めない環境=人間も住めない環境』となり、動物との共存を考えた環境作りが必要です。 この講座を機に、それぞれの動物達の生息地やその置かれている環境などを理解して頂き何かすべきことはないかと考えるきっかけになるような動物園でありたいと思います。
兼光さん

鳥類についての総論・・兼光さん

鳥類は世界中に約8000種生息しており、このうち日本では旅鳥も含めて約600種をみることができます。王子動物園では18目76種410羽の鳥類を飼育しています。
総論として、鳥によって違う営巣場所・雛の成長・餌のもらいかたなどスライドとビデオによる説明が行われました。
吉竹班長

フラミンゴの子育て・・吉竹班長

フラミンゴの飼育を20年担当し、毎年たくさんの赤ちゃんが誕生しています。
王子動物園での飼育状況と子育てについて説明します。
当園の飼育状況
飼育数→ ヨーロッパフラミンゴ 77羽  
  ベニイロフラミンゴ 80羽  合計157羽
餌→ フラミンゴペレット 全羽に対して20〜22kg(1羽当たり150g前後)
  オキアミ 全羽に対して24kg(1羽当たり160g前後)
繁殖歴→ 1983年から繁殖がはじまり、1999年まで飼育していたチリ種も含めて2001年まで合計388羽がふ化しました。 生まれた雛は、海外では中国をはじめとして国内の各地の動物園に「神戸っ子」のフラミンゴが搬出されています。
フラミンゴズ 求愛行動(ディスプレー)
1月になると、羽色も一段とあでやかになり鳴き声も頻繁になり十数羽単位で求愛行動がみられるようになります。求愛行動のパターンは幾つかあります。
(1) 頭の旗振り・・首をまっすぐに伸ばし頭を左右に振ります
(2) 行進・・同じ方向へ集団で行進します
(3) 翼の敬礼
(4) 両翼を広げる・・普段見せない所を見せてアピ−ルしています
お辞儀をするように前傾姿勢をとる・・片翼のばし
ペアリング
雌雄2羽が、採餌や休息などの同一行動が見られるようになれば、その2羽はペア成立となり、そのうち交尾を行います。
巣作り
巣作りは、雌雄共に行い足元の土をくちばしでかき寄せ盛り上げていき植木鉢を伏せたような台形の巣を作ります。 大きな巣では、上部が直径30cm前後、高さは50cm位あります。
産卵
早い個体では3月下旬頃から産卵しましが、4〜5月に集中します。産卵数は1卵ですが、まれに2卵のこともあります。
抱卵
雌雄交替で行います。雨の日などは、翼をやや広げるようにして巣全体を覆います。
ふ化
ふ化日数は28〜29日ですが、ほとんどが28日でふ化します。ふ化する1日前位に、雛が卵の中から穴をあけはじめ小豆大にあくと半日位進展がなく、 その後に徐々に卵を割っていきふ化します。雛の上くちばしには卵を割るための突起物があり(卵嘴らんし)、これはふ化後数日で脱落します。
成育
フラミンゴミルクと呼ばれている、そのう(食道の一部が袋状になっている)で分泌された液状のものを両親からもらいます。
ふ化後5〜7日位で両親に誘導され巣から離れ、群れに入ります。
ふ化後2週間位までは、親が付き添っていることが多いが、この頃から雛だけが集まって行動することが多くなります。これを、共同保育所(クレイシ)と言います。
フラミンゴミルクとは
そのうで分泌される赤色の液体です。蛋白質と脂肪に富み多量のカンタキサンチン色素と少量の赤血球を含んでいる為赤い色をしています。
フラミンゴミルクは雌雄共に分泌され雛に与えます。フラミンゴミルクを与えることは非常に体力を使うので、育雛後半には親の鮮やかな羽色がうせてきます。
成鳥になるまで
(1) ふ化後2カ月位になると綿羽から幼羽に生え揃い自力採餌できますが、時々親にフラミンゴミルクをねだってもらいます。
(2) ふ化後6カ月位になると頭部の方から徐々に赤くなっていき、生後1年後の換羽が終了すると成羽になるが、脚の色はまだ黒っぽいです。
(3) ふ化後3年目から繁殖行動が見られるが、ペアアリングだけで終わるか営巣できず産卵しても破卵し成功することは少ないです。
(4) 本格的に繁殖できるのは生後5〜6年になってからです。
大山さん

ペンギンの子育て・・大山さん

ペンギンは、南半球にしかいない動物です。南極の周りだけではなく、赤道付近まで南半球の全域に広くすんでおり、すべての鳥の中でもっとも卓越したダイバーです。
しかし人と生活圏を共有している種類が多く、そのため個体数が減少し種の保存が危ぶまれているペンギンが多くいます。
ペンギン

当園での飼育状況
キングペンギン・・3羽(日本では272羽飼育されています)
フンボルトペンギン・・19羽(日本では1397羽飼育されています)

アジ、ペンギン用ビタミン剤
ペンギン総数19羽に対して1日約15kgを給餌しています。
求愛行動(ディスプレー)
大まかに3つのディスプレーがあり、動物園でもよく観察することができます。
(1)恍惚のディスプレー
主にオスによって行われる「縄張り宣言」とも言うべき一連の動作
ペンギン2
(2)相互ディスプレー
オスメス同時に演じられる一種の「あいさつ行動」
(3)おじぎのディスプレー
つがいの絆を強くしたり維持する機能を持っています。
営巣
(1) 地表面に営巣する  ほとんどのペンギンがこの種類の営巣をします。
(2) 地中に営巣する  フンボルト属、コガタ属の種は土壌条件の適した地中の穴に巣を構えます。
(3) 営巣しない   エンペラー属は巣を作らずに、足の上で卵を抱いたり、ヒナを抱いたりします。
産卵
最も大型の種の、エンペラーペンギン属は大きな卵を1個産みます。その他の種は通常1〜2卵です。
抱卵
オス、メス2羽そろって行うか、交互に交代して行います。
育雛
警護期と共同保育期の2つの異なる期間からなっています。
地中に営巣する種では、ヒナが日中単独で巣に残されるものの、夜間はどちらかの親によって抱かれるような、中間的な期間もあります。
ヒナへの給餌
ペンギンは、親が一度食べたモノをクチバシからクチバシへと渡します。
一つの例として、エンペラーペンギンなどは抱卵期間が長いため、 ヒナがかえった後も餌をもったメスが帰るまでの数日間(40〜60日)ペンギンミルクと呼ばれるタンパク質豊富な食道の「擬乳状」分泌物をふ化したばかりのヒナに与えます。
山田獣医師

鳥類の性判別について・・山田獣医師

動物園における性判別の必要性
種の繁殖の為に、動物の血統管理・動物の性判別が必要
外見で見分けのつく鳥
哺乳類に比べて鳥類は雌雄判別が非常にむずかしい。
オシドリ・クジャク・ダチョウなどは羽の色の違いにより見分けがつきますが、ペンギン・フラミンゴなどは外見では見分けられません。
性判別法において重要なポイントは?
(1) 鳥にとって安全 野生動物なので、近づく・つかまえることに対するストレスは大きい。
鳥に苦痛を与えないことが重要。
(2) 結果が確実  
(3) 手技が簡便で早い  簡単でスピーディにできる判定が望ましい
(3) 経済的  
性判別法いろいろ
直視法 ペンギン→総排泄口を直接観察して判断する
外部計測法 コウノトリ→くちばしの長さと巾を測定。今までの統計に従い判断
遺伝学的手法 染色体→鳥類はZとWの染色体からなりZZはオス、ZWがメス
血液、皮膚細胞を培養し染色体を調べる DNA分析→最短2日で結果が出る。血液、毛根部よりDNAを抽出し、鳥にとってもストレスが少ない
 
 
現時点ではこの4つを満たす方法はまだなく、開発途中の分野です。 今後動物の繁殖の為にストレスを与えず、上記の4つのポイントを満たす方法が開発されることが大切です。  
 
 
山田獣医師 1998年から始まった「大人のための動物園講座」も今回で7回目を迎え、スポットを当てた動物を、日々の飼育の中から動物園で実際に撮影されたスライドやビデオをあわせた進行でわかりやすく、新しい発見の連続の講座でした。 また動物の生態のみならず、地球環境をも考える機会となるメッセージを発するこの講座の意義は大きく、動物とほとんど接する事のない日々の生活の中で、いったい自分になにができるのかと考える、心に小さな火種をつける機会となる講座であり、その輪が大きく広がることを期待し、次回を楽しみにしています。



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