思い出のアルバム 

 1998年6月28日に「第1回大人のための動物園講座 王子動物園を194倍楽しむ方法」というテーマで初めて開催されました。14年目の今年は27回を迎え、「動物の子育て」をテーマに、飼育担当者から写真や動画による解説を中心に、2月26日(日)に事前申込の100名を対象に開催されました。
■「草食動物の子育て」  飼育展示係1班 小川高志さん

 2011年6月12日、父親の「凪斗(ナギト)」(6歳)と母親の「ラブ」(6歳)の間に初めて赤ちゃんが誕生しました。その子育ては赤ちゃんの安全確保の為に父親と離して、母子で生活させます。


 「ナミコ」が2009年8月11日の朝に赤ちゃん「ナナミ」を無事に出産しました。王子動物園では、「ナミコ」の前に飼育していた「茶目子」が1989年11月に出産して以来、約20年ぶりの繁殖で、「ナミコ」の出産成功は初めてです。 初めての出産で神経質になっていたため、母子は静かに監視カメラで観察し、水中での授乳も確認されひと安心。順調に成長した「ナナミ」は、現在広島の平川動物園で元気にしています。


 足が曲がった状態で立つことが出来なかったため人工哺育となったシタツンガの試行錯誤の飼育過程の紹介。哺乳瓶の飲み口の工夫や、立つために必要な足のギプスの作成やマッサージにより歩くことが出来るようになるまでの育児の奮闘。
それぞれの母親は、動物園という狭い世界での子育てを強いられますが、「柵があるよ」「床が滑るよ」など自分達が生きていく為に必要な情報を、両親が身を持って教えているようです。

■「ヨザルの親になって」  飼育展示係2班 森 誠さん
 ヨザルは南米の森林に住む新世界ザルで、唯一の夜行性のサルで、子育ての約8割は父親が担当します。
2011年2月に「ナイト」(体重88g)は誕生しましたが、3月7日に母親が指を負傷し動物病院で治療のため一時離れ離れの生活を強いられました。怪我が治って一緒に生活させましたが母親が威嚇して危険なため、人工哺育になりました。
24時間体制で見守り、ミルクはむせないように小さな注射器で2時間毎に飲ませます。人間の子どもと同じように、大きな瞳で私の顔をじっーと見つめながらミルクを飲みます。

■「国内初 キエリボウシインコの人工ふ化・育雛(いくすう)」
飼育展示係総括班長補佐 中岡正利さん

 2011年2月17日メス親が衰弱し動物病院に入院中に18gの卵を産卵。有精卵だったのでふ卵器(温度37.4〜37.8℃・湿度40〜50%)に入れ、卵にテープを貼り、それを目安に卵の位置を1/4づつ、1日4回転させ(転卵)見守っていると、

3月22日に卵に小さな穴が開いているのを発見。その後なかなか変化がなかったので、殻の一部を取る手助けをし、3月24日に10.6gのヒナが誕生。ティースプーンの両側を折り曲げた授乳専用の器具を手作りし、ミルクを飲むと喉の下の「そのう」という部分が膨らむので、それを目安にミルクをゆっくりと与え、順調に成長し今は動物病院のアイドルです。


ふ化21日目
ミルクを飲むと「そのう」が膨らむ

ふ化54日目
さやをかぶった羽が沢山ではじめる。 280g

ふ化90日目
パソコンの上で
(寂しくなるとサークルから出る)

ふ化146日目
全身にすきまなく緑の羽が生える。
入院してきたセキセイインコと共に


王子動物園に通算12年間勤務され、今年3月で定年退職される副園長の奧乃弘一郎さんが、これまでの経験を基に動物園や野生での動物の子育てについて講演されました。

■副園長の見た「動物の子育て」
神戸市立王子動物園 福園長 奥乃 弘一郎さん

 王子動物園で12年間働き、動物の子育てについても貴重な経験ができました。動物たちが色々な方法により子育てを行うなかで、生き延びる戦略としてオオカミやサイチョウなどのように、母親、父親以外の「育児のヘルパー」がいることを知りました。

オオカミ
・厳格な一夫一婦制
・厳格な順位
・母親が狩りに出ると一番強いオスが子の子守
・巣から子が出ると直系の兄姉がヘルパー

希少な動物の世代をつなげていくという「種の保存」では、動物園はヘルパーの役割を担うことができます。動物園の動物たちにとっては、飼育職員がまさにヘルパーです。 王子動物園では「キンシコウ日中共同飼育繁殖研究」(1992年5月13日〜2004年3月23日)が行われ、4頭の赤ちゃんが誕生(内1頭は死亡)。世界で初めてキンシコウの中国への里帰りを実現させるという、大きな成果をあげました。


「ジャイアントパンダ日中共同飼育繁殖研究」も2000年7月16日から現在も継続されています。
2008年8月26日 15時46分 誕生
     8月29日 13時50分 死亡


 子育ては命をつないでいくことです。動物たちも子を守り、子育てを手助けする様々な生き方があり、その様子を身近で見ていただけるのが動物園で、動物園にはたくさんの命の感動があります。



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