思い出のアルバム 



 神戸市立王子動物園は、昨年3月に日本で初めて繁殖に成功したインコの一種「キエリボウシインコ」が6か月間生存したことにより、平成24年度の繁殖賞を受賞しました。
 繁殖賞とは、(公社)日本動物園水族館協会に加盟している動物園や水族館で飼育している動物の繁殖に国内で初めて成功した場合に表彰される賞です。
 今回のキエリボウシインコは平成23年2月17日に産まれた卵を、ふ卵器で温めたところ3月24日にふ化しました。そのヒナは人間が育てる人工育雛(いくすう)で元気に成長し、現在は1歳2か月になり、飼育係や獣医師などのものまねをするのが得意になっています。
 なお繁殖賞は、その親が生み育てる「自然繁殖」、飼育係など人間がふ化や子育てをする「人工繁殖」、さらに「人工授精」があります。今回は人工繁殖での受賞でしたが、キエリボウシインコの繁殖は「自然」、「人工」ともに成功したことはなく、この種の国内初の繁殖例となりました。
 王子動物園では、過去にアムールトラやグレビーシマウマなどで繁殖賞を受賞しており、今回が20回目の受賞です。

今回の繁殖の経緯
2011年(平成23年) 2月17日 キエリボウシインコのメス(親鳥)が体調不良で、園内の動物病院に入院
2月20日 入院中に親鳥が卵をひとつ産卵。ふ卵器に入れ、人工ふ化を試みる。
3月24日 ふ化。人工育雛(いくすう)を開始。ふ化日数32日
5月 3日 1日7回3時間おきに給餌を続け、ふ化後40日で開眼
6月10日 ふ化後78日で、ほとんどの羽が生え揃う
9月24日 ふ化後6か月生存
2012年(平成24年) 5月24日 (公社)日本動物園水族館協会より繁殖賞を受賞
現在は、展示場での飼育に向け、訓練中

今回の繁殖個体について
名前: インコちゃん
性別: 不明 体長: 約30cm 体高: 約25cm 体重: 約360g
〔参考〕成長の場合 体長:約40cm、体重:約480〜550g

キエリボウシインコ
分類: オウム目インコ科
英名: Yellow-naped Amazon
学名: Amazona auropalliata aurpalliata
分布: 主に南アメリカ(メキシコ、ニカラグア、コスタリカなど)
学名: 全体的に綺麗な緑色をしており、後頭部に「キエリボウシ」(黄襟帽子)の由来となっている黄色い部分があります。ものまねはインコの中で一番上手です。
観賞用や羽を採るために密猟され、野生のものは数が減少しており、ワシントン条約附属書Tに記載される絶滅危惧種です。

国内の動物園におけるキエリボウシインコの飼育状況
15園23羽(オス9羽、メス4羽、不明10羽) ※2011年12月31日現在、今回の繁殖個体を含む

王子動物園における過去の繁殖賞受賞歴
・マレーオオコウモリ(1957年・自然) ・クロサイ(1965年・自然)
・ルリコンゴウインコ(1969年・自然)・チンパンジー(1970年・人工)
・オウサマペンギン(1970年・人工) ・アムールトラ(1978年・人工)
・グレビーシマウマ(1978年・自然)・アムールトラ(1979年・自然)
・ヨーロッパフラミンゴ(1981年・人工)・オセロット(1982年・人工)
・ロウバシガン(1982年・自然)・カラカル(1983年・自然)
・シロカケイ(1983年・人工)・フクロテナガザル(1984年・人工)
・ヒワコンゴウインコ(1984年・自然)・ヒクイドリ(1985年・自然)
・ホンドタヌキ(1986年・人工)・キンシコウ(1994年・自然)
・インドホシガメ(1999年・人工)・アジアゾウ(2005年・人工)

繁殖賞
年に一度、(公社)日本動物園水族館協会に加盟する動物園・水族館が飼育している生物の日本で初めての繁殖に成功し、6か月以上生存した場合にその園館に対して授与される。国内初の繁殖例を評価し、情報公開することで、加盟園館全体の繁殖技術の向上とその蓄積が、希少動物の種の保存に寄与することを目的に1957年(昭和32年)に制定されました。

公益社団法人 日本動物園水族館協会
(JAPANESE ASSOCIATION OF ZOOS AND AQUARIUMS)
日本における動物園・水族館等の協力により、動物園・水族館事業の発展振興を通じて、文化の発展と科学技術の振興に寄与することを目的に日本の動物園と水族館で構成されている公益法人。1939年(昭和14年)に19園館で発足し、現在の加盟園館は動物園86、水族館66の計152園館。総裁は秋篠宮文仁親王。

2011年3月24日撮影(ふ化1日目)

2011年4月15日撮影(ふ化23日目)

2011年5月18日撮影

2012年5月18日撮影



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