*  思い出のアルバム  *

* 今回はカバ特集・・・第3回「大人のための動物園講座」



 平成11年6月27日、第3回「大人のための動物園講座」が開催されました。 今回は『カバ特集』。

写真 職員 ●兼光飼育職員(キリン・カバ・サイの大型獣担当)によるカバの説明
 分類学上の位置や、ビデオによる野生のカバの生息状況、 日本におけるカバ飼育の歴史、王子動物園のカバの飼育についての説明がされました。
 今回は「王子動物園のカバ」にポイントをおいて講演内容を紹介します。

 現在王子動物園には、オスの「出目夫」と日本第2位の長寿記録をもつメスの「茶目子」の2頭が飼育されています。
 「茶目子」は17回の出産を経験し、内12頭の子供たちが北海道から九州、 また天津動物園など各地の動物園で暮らしています。
 現在「茶目子」は高齢の為、出産による母体の影響を考え、 オス・メス別々の 部屋で飼育しています。 ですから外の運動場と大プールにも、毎日交代で出ています。

【カバの食事】
 動物園で生活する動物にとって、食事は単に栄養を取るだけではなく、 1番の楽しみであり、またストレス解消としての役割も大きいのです。
量、回数・・・1日1頭50kg、朝・夕2回が基本
ただし運動場に出た日は1日3回となります。
メニュー・・・イネ科の青草を中心にヘリキューブ (アルファルファーとふすま、ビタミン、カルシュウム、塩を混ぜたもの) など。
食べかた・・・唇がかなり硬く、食べ物をくわえたら顔を上下させて口の奥へ送り込みます。
「茶目子」は高齢の為か食べ物を食べ散らかすことが多いので、 食事中に飼育員がえさを集め、食べやすくします。

【カバのうんち】
写真 カバ  オスカバの最大の特徴は「まきふん」。
 「まきふん」とは、しっぽをワイパーのように小刻みに左右ふり、 うんちを周辺に撒き散らすことです。
 野生の場合、かなり奥の陸地まで食事に出かける時の道標に、 また縄張り確認や威嚇の為に行うそうです。 そうじをして、きれいなプールになって1番にすることは「うんち」なのです。 だからカバプールはいつも濁っているのです。 そうじも大変!カバ舎の天井にもうんちが飛び散っているので、 それには消火栓のホースで、水圧をかけて流すのです。

【カバ舎の水温管理】
 運動場に出られない日と夜を過ごすカバ舎には、プールとセメントの陸地があります。 水中生活の長いカバにとって、健康管理の上で水温を管理する事が重要となります。
 冬、水道水は7℃まで下がります。その中にいればカバの皮膚はひび割れ、 そこから細菌が侵入し病気になってしまいます。 ですから王子動物園では井戸水を使い、24時間出しっぱなしにする事により、 冬でも水温17℃をたもち、快適な水中生活を送る事ができるのです。 また寝室全体は、赤外線暖房で暖めています。

写真 職員 ●村田獣医によるカバの健康管理及び治療についての説明
 カバがかかる病気で1番多いのが「皮膚病」です。 皮膚が乾燥→ひび割れ→細菌が侵入し皮膚病になるのです。
 カバの自己防衛策として
(1)「血の汗」を出す・・これは汗腺から出る皮膚の湿気を保つための保湿剤です。 赤い色をしているので「血の汗」と呼ばれています。
(2)水の中に入って湿気を保つ・・冬は水温が低いと水に入りたがらないので水温管理が大切です。
 治療方法
 皮膚の治療は、イソジン消毒や、軟膏を塗ります。
 内科的に薬の内服が必要な場合は、
・日常食べているえさに混ぜる→おからやふすまをお湯でといて薬を混ぜたダンゴにする。
・日常食べていないおいしいえさに混ぜる。
薬の調合は獣医、カバに確実に食べさせるのは馴れている飼育職員

【1代目出目夫の悲劇】
 現在飼育中のオスの出目夫は2代目です。
 王子動物園内で1番大きなカバの病気をした、1代目出目夫を例にとりお話します。

 えさを食べずにプールでじっとしている出目夫。 腸閉塞かもしれない、と診断はついても実質的な治療ができないのです。 なぜならあれだけ巨体のカバです。
 麻酔をして横になれば、自分の体重で肺を圧迫して肺水腫をおこしてしまう為、 くやしいけれど見守るしかないのです。そして1週間後出目夫は死亡しました。
 解剖して腸から出てきた物は、『軟球の野球のボール』。 出目夫の命を奪ったものは、たった1つの小さな野球のボールだったのです。 そのボールは、胆汁にそまって緑色に変色していました。 恐らくカバが大きな口をあけた時に、投げ込まれたのでしょう。

【カバの歯の切断】
 上あごを突き抜けない為に、1年か2年毎に門歯と犬歯の切断をします。 プールに体がつかっている状態で口を開けさせ、小型ののこぎりで飼育員が切ります。 まるで大工仕事のようですが、信頼関係の上に成り立つ作業なのです。 実際に切断作業がされているビデオをみながらの説明にみんな納得!

 講座の後は4班にわかれ、カバ舎・飼育調理室・動物病院などを見学し、 普段体験できない事を経験することができる「大人のための動物園講座」。
 今回参加された方の感想は
「前回は抽選にはづれてしまったけれど、今回当選したのでうれしい」
「見るだけの動物園は楽しいけれど、飼育員さんの仕事って大変」
「実際の経験談を飼育員さんから聞く事ができる、こんな機会を増やしてほしい」
「ゾウの鼻を触る事ができて感激!」
「こんなチャンス、いろんな事を教えてもらわないと損!」

 また新たな動物園の思い出が、参加されたそれぞれの方の胸に刻まれたことでしょう。



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