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第9回「大人のための動物園講座」 〜サルたちのエンリッチメント〜 |
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15才以上の大人を対象とした恒例の動物園講座が、2月23日(日)朝9時30分から開催されました。![]() ■大久保園長あいさつ ![]() それは飼育動物、動物園、見る側の3者にメリットがあります。 従来の箱型獣舎での平面的な動きだけではなく、 エンリッチメントを取り入れることによって立体的な動きができるようになり、 なにより動物のストレスも少なく、活発な動きが観察でき、 飼育側も見る側も楽しめます。 王子動物園でもサルを中心にエンリッチメントを導入しています。 動物園の近況として、4〜5月頃完成予定のバリアフリーのカバ舎、 京都動物園から帰ってくる2頭のゴリラ舎の建設が進められています。 そろそろパンダも発情のシーズンに入り、 さまざまな動物の四季折々の姿をみることができる動物園をこれからも楽しんでいただきたいと思います。 |
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■エンリッチメントの概要説明・・・・動物病院 嶋谷主査 環境エンリッチメント定義 「動物福祉の立場から飼育動物の”幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策」 ![]() えさと清潔管理はされていますが、本来の生活とは程遠いものです。 限られたスペース、与えられた物しか利用できない、 行動のレパートリーが少ないなどストレスが増し、 その結果飼育下でしかみられない行動、例えばオリをなめる、はきもどし、 同じ行動の繰り返しなどが見られます。 野生なら活動時間の多くはえさを求め、食べることについやされますが、 動物園ではえさは与えられるのでその時間は非常に短いのが現状です。 その為1日の行動時間配分がゆがみ、退屈に過ごす時間が多くなります。 心理面での苦痛を最小限におさえ、本来の種の生活パターンや時間配分に近づけるため、 環境を自然に近づける工夫をすることです。 動物にとって何が必要かを考えて、 何らかの工夫をすることすべてが「エンリッチメント」にあたります。 あくまでも動物をどう生活させるか、動物の視点にたった飼育方法で、 その動物がもっている行動を引き出すことが可能になる環境造り、 それが「エンリッチメント」なのです。 |
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■サルの生態とエンリッチメント 〜当園の具体的な取り組み〜・・・川上飼育員 ![]() キンシコウ、フクロテナガザル、シロクロコロブス、 ブラッザグエノンなどは樹の1番上の樹幹部(樹上性)で生活しています。 ワオキツネザル、マンドリルなどは地上部(草地性)で生活しています。 その種のサルが、どこで生活しているかを知ること、 すなわちその環境にあった工夫をすることにより、ストレスを少なくし、 必要な生活環境を整えることが重要です。 〔2〕他種より施設からの影響が大きい サルは知能が高く、自然界でも高度な環境で生活しています。 高度であるがゆえに、環境から受ける影響が強く、 動物園でも自然界にできるだけ近い高度な環境下での飼育管理が必要となります。 〔3〕他種より環境管理での影響が大きい 問題になるのが「ストレス」です。 ストレスには外からの要因によっておこる外因的ストレスと、 内面からの要因によっておこる内因的ストレスの2種類があります。 外因的ストレスは、その原因を考え取り除けば軽減しますが、 問題は内因的ストレスです。 内因的ストレスを軽減させるための方法のひとつとして「馴致(じゅんち)」があります。 馴致とは馴れさせること、次第にある状態になるようにすることです。 動物がもつ生態、生活リズムを応用して、それを違う形で使う、 例えば、シマウマ模様の軽トラックで毎回えさを運ぶ事を繰り返すことにより、 軽トラックがくれば食事の時間と認識するようになります。 またおやつの時間をもうけ、 直接飼育員が与えコミュニケーションをとることにより、 内因的ストレスの軽減にもつながります。 知能レベルが高いサルゆえに、環境管理での影響が大きいのです。 次に、ビデオによる野生と動物園でのエンリッチメントの比較、 動物園での取り組みについて説明を受けた後、実際の施設見学に出かけました。 |
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◆ゴリラ舎![]() |
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◆キンシコウ 樹上生活のキンシコウは、 地上8mの高さに縦横無尽に組まれた木の上を飛び跳ね、生活しています。 |
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◆フクロテナガザル 雲てい移動が得意なフクロテナガザルは、 1本1本の鉄骨で構成された天井に手をひっかけ、 身軽ですばやい移動が人々を驚かせています。
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![]() 自然木を組んだ動物園自慢の手作りエンリッチメント。 上部に登れば雄大な六甲山系や園内を一望することができます。 動物達の生活環境を少しでも自然に近づけること、当たり前のようですが、 スペース的な問題をはじめ現実には難題山積ですが、 主人公である動物の”幸福な暮らし”を確立させ、 ストレスを軽減させる為のたゆまない研究と飼育員の情熱を実感しました。 |
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