ジャイアントパンダは自然交配をするとほとんど双子にならずに1子だけを生みます。
野生のパンダについてもほとんどの場合が1子しか生まないと考えられています。
そして1回の出産で1頭の子どもしか育てないと言われています。
しかし今回は「No.20」、「No.21」ともに双子でした。じゃあ、どうするのか?
人工哺育しかありません。人工哺育の現場を見てくる。これが私たちの今回の研修での最大の課題でした。
(写真:人工哺育器の中の「No.21」の子ども) |
私たちがセンターに到着した時、すでに生まれていた「No.20」の2頭の子のうち、1頭はお母さんが育て、
もう1頭は人工哺育で育てられていました。ジャイアントパンダの子どもは丸裸で非常に小さく生まれてきます。
そしてお母さんは1頭しか育てようとしません。だから双子の場合の2頭目は出生後すぐに取り上げて人工哺育にします。
人工哺育には特別に作った人工乳を使います。でもそうなると2子目は母乳を飲めないことになります。
みなさんもご存知のとおり、お母さんから出る母乳には栄養分以外に赤ちゃんが病気にうち勝つためのいろいろな成分が含まれています。
人工哺育の子どもに母乳を飲ませるにはどうするか? そう、センターの人は本当にやるのです。中国4,000年の技? 驚異の子替えと搾乳を!!
子替えというのは母親が育てている子どもと人工哺育で育てている子どもを定期的に取り替えることです。
(写真:臥龍繁殖センターで2000年に生まれた子どもたち。神戸でも早く子どもが見られるように繁殖を目指してがんばっています。) |
臥龍繁殖センターの職員と王子動物園の職員との交流は、「コウコウ」と「タンタン」が神戸に来ることが決まってから始まりました。
そして昨年の春に神戸にやってきたセンターのある職員が言ったのです。「タンタンが出産したらお乳を搾りなさい」と.....。
みなさんはジャイアントパンダを愛くるしく優しい動物だと思っているでしょう!?
と〜んでもない(って言ったら「コウコウ」と「タンタン」が怒るかな?)。
中国語で大熊猫と書くように彼らは熊に非常に似た、どう猛な動物なのです。よ〜く目を見てください。非常にきつい目をしていますよ!!
爪を見てください。あれでひっかかれたらひとたまりもありませんよ!! そんな動物からどうやって子どもを取り上げるの?!
どうやってお乳を搾るの?! と言う気持ちでその職員の話を「そんなことできるわけがない.....」と思いながら聞き流していました。
でもそれをやったのです。今回の研修でお世話になったセンターの職員の許さん(「No.20」の飼育係)と韓さん(「No.21」の飼育係)は
それぞれのパンダの専属の飼育係です。「No.20」も「No.21」ももともとは野生だった個体だそうで、許さんは約3年間、
韓さんは約5年間かけてそれぞれのパンダを触れるまでに慣らしたということでした。それで二人とも自分のパンダの陰部を観察したり、
搾乳のためにお乳を搾ったりできるのだそうです。これには私たち二人ともびっくりしました。
臥龍繁殖センターでの人工哺育は、センターの人たちが苦心して作った人工乳と許さんや韓さんのようなプロの努力により成功しています。
|