*  思い出のアルバム  *

* テーマは「インドゾウ」・・・大人のための動物園講座



回を重ねる度に好評な大人のための動物園講座が、6月24日(日曜日)に開催されました。
今回のテーマは、王子動物園で生活している『インドゾウ』たち。

大久保園長 ●大久保園長あいさつ
 ゾウは昔から家畜として、また神秘的な宗教的対象にもなっています。
とてもかしこい動物で、職員の上下関係も察知しており、かわいいのですがその反面、 体が大きいので危険な動物といえます。
 いま、王子動物園には3頭のインドゾウがいます。
まずは57歳のメスの「諏訪子」。日本最高齢のインドゾウで、今年の春先体調を崩し心配したのですが、今は元気になりました。
次は11歳のメス「ズゼ」、そして9歳のオスの「マック」。
ゾウの性成熟は10歳前後なので、近い将来赤ちゃんの誕生も期待できます。
日本国内ではアフリカゾウの出産例はありますが、インドゾウはありませんので、 うまくいけば日本初と、期待しています。
 現在動物たちが住めない環境、すなわち人間も住みにくい環境になっています。
その原因は動物の生息地の破壊や減少にあり、動物の種の保存=生息地の保全=地球環境の保全なのです。
この講座を通し地球環境についても考えていただく機会になればと思います。

●インドゾウの飼育担当 芦田さん
芦田さん インドゾウについての説明と、王子動物園の人気者である3頭の個性を手作りの冊子に沿って説明。

Q: ゾウはどこにすんでるの?

A: ゾウは現在、アフリカゾウとアジアゾウの2種類に分けられています。名前のとおりアフリカゾウはアフリカ大陸に、アジアゾウはアジア大陸に住んでいます。
かつては広い範囲に住んでいましたが、今では棲息地も狭くなり、限られた場所にしか住んでいません。現在野生での数は、アフリカゾウが65万頭、アジアゾウが約4万頭と言われています。

【アジアゾウとアフリカゾウの違い】
  アジアゾウアフリカゾウ
体型
体重3〜5トン4〜7トン
体高2〜3.5m3〜4m
頭耳
きば
(門歯)
メスは小さく、外からほとんど見えないオス、メスとも大きい
臼歯
鼻の先
蹄の数前足  5
後ろ足 4
前足  4
後ろ足 3

アフリカゾウの中には「サバンナゾウ」「マルミミゾウ」、アジアゾウの中には「インドゾウ」 「セイロンゾウ」「スマトラゾウ」など生息地域により呼び名が違います。

【自己紹介】
  
●マック
1992年6月13日
スイス、キンダーガーデン動物園生まれ。
1995年3月24日来園。
立派な牙を持つオスゾウ。
やんちゃだが、怖がりな一面もある。
マック
ズゼ●ズゼ
1990年4月5日
ラトビア共和国リガ動物園生まれ。
1996年9月3日来園。
メスゾウ。
何事もマイペースで、チェーンや丸太を使って一人で遊ぶのが好き?
●諏訪子
1950年9月28日来園。
メスゾウ。
今年で58歳。日本一の長寿象。
ハトが嫌い。
水曜日の休園日、部屋の外にハトが来ると残りの草を鼻で巻き上げ、ハトに向かって投げます。
小さくてチョコチョコあるくものが嫌いなようです。
諏訪子

【100sの食事をペロリ!】
王子動物園で生活している諏訪子は一日に約100sの餌を食べます。
そのなかでも特にリンゴ、バナナ、カボチャは大好きです。
また、ゾウはタケも好んで食べます。
太い丸太のような竹でも足で踏んで割り、器用な鼻を使って小さくしてから食べています。
タケの食べ方にもそれぞれの性格が現れます。
例えばズゼは食べやすいようにひとくちサイズにして口に運びますが、 マックは大きいままで大胆にガリガリと食べます。

【ゾウの体温はどうして計る?】
Q:人間は熱を計るとき脇の下に体温計を挟みますが、体の大きなゾウはどうして計るのでしょう?
A:体温測定には直接肛門に体温計をさして計る方法もありますが、王子動物園では排便した直後の便に体温計をさして計っています。

最近の諏訪子の体温

6月14日 9時43分 36.2℃
6月13日 9時35分 36.0℃
6月10日 9時36分 36.0℃
6月 9日 9時53分 35.9℃

 【ゾウの飼育方法について】
ゾウの飼育方法には、「直接飼育」「間接飼育」「準間接飼育」の3つの方法があります。     
●直接飼育
飼育係員とゾウが直接接触し、健康管理や移動、採血など行う方法である。
長所としては、馴致、調教を行うことにより、健康管理や移動などにきめ細かい対応ができ、 飼育係員のゾウに対する愛情や熱意が増すが、短所としては、飼育係員が不慮の事故、 に遭遇する機会が他の動物に比べて多いことである。
ここでは諏訪子とズゼに行っています。
安全確保のため必ず3人のスタッフで行います。
1人は直接ゾウに、もう1人は同じ運動場内の少し離れたところで、 3人目は獣舎の中から見守ります。
直接飼育

●間接飼育
飼育員がゾウに直接接触せず、柵ごしに取り扱うので間接飼育と呼び、 トラやライオンなどの猛獣を飼育する方法である。飼育員の安全は確保できる。
ゾウは鼻の長さが2mもあり、柵から鼻が出る場合には2m以内は攻撃を受ける範囲内となるので、 他の猛獣以上に柵のそばに近づくことができない 。

●準間接飼育
飼育係員の安全を確保することを条件として、柵や壁などの遮蔽物ごしにゾウと接触し、 健康管理に必要な調教や移動、採血などを行う方法である。北米では安全確保の方法として、 無柵の場所に柵を設けたり、広い柵の場合には鉄板や、網をはって、ゾウに鼻で攻撃されるのを 防ぎながら、柵の間から、削蹄や採血を行っている。
又、海洋哺乳動物、特に鯨類などで行われていたトレーニング方法として、 棒の先端に目印となるターゲットをつけ、 そのターゲットに触れるたびに褒め言葉や少量の餌を与えて行うトレーニングは、 直接接触できないゾウの健康管理を行ったり、 ゾウの運動不足やストレスを解消するのに大きな効果があり、現在最も注目を集めている。
しかし中途半端に実行すると事故につながる懸念があるので、 実行する場合は飼育係員が手法の概念を理解することが必要不可欠である。  
ここではオスのマックに行っています。
柵ごしですがゾウとのコミュニケーションはとれます。
準間接飼育

ゾウについての講義後、ゾウ舎に移動し、毎日行われているズゼの直接飼育を見学しました。 大きな体とは対照的な繊細な動作、まるで人間の言葉がわかっているかのような動きに、 日々のトレーニングの成果を実感しました。 ますますインドゾウ、動物園を身近に感じた『大人のための動物園講座』でした。



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